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■詩 No.011

「失恋夜想賦」 1997.09.19


地獄の季節――
むせ返る嘔吐に伴う卑しい懸念とかけ引きとの
夜の帳の降りる頃から
忘却を促し、偽りの慰安をもたらす
予想された忌むべき朝にかけて
おそらく僕は思い出す
――涙が刻む一年(ひととせ)の
――水面(みなも)を打つ非情なる響きの中に
言い難い、ある種歓びを反芻する幻想の機械――
クロノメーターの音を聴いている……

「思い出」?――
ときには所作事であり
あるいは僥倖を偽り過去に殉ずる
物憂げな空白を埋める詞藻のように
隠微な心の中を放縦に徘徊して廻る魑魅魍魎……
窮死の試練として課された永遠の失墜の中で垣間見る
――沛然たる豪雨の立てる
暗然な狼煙のように立ちのぼる――
深遠なる地の底でゆらめく地獄のほむら……
半ば錯乱した僕を功徳と言って玩弄するかのごとく
耗弱した精神を徐々に蝕む遅効性の病……
凶鳥(まがどり)の工作する鳥葬のようにカムフラージュされた
幻視する街の風景が捏造し、
歪曲し、置換し、投影した心象風景……

ああ、救いをどこに求めよう!
ことさら耳を強く打つ――
まるで自然界の動物たちが子供の失踪に気付き咆哮する
あるいは春をむかえた険しい雪山から
積雪のなだれ落ちる轟きにも似た――
夢の中での不意の墜落のような絶望を告げる輪唱が
なす術もない呻吟する毎日をつむぎ出す
一方でその殺風景な文字盤の上を闊歩して止まぬ
「時計仕掛けのオレ」たちは
不毛な愛の環から外れた
不運な松明に灯る叡智の光さえも吹き消して
不夜城へとおもむく僕をなだめすかし
思いとどまらせようとする

そして今夜もまた
あの呪わしくも長い夜の間(ま)に
僕はひとつ新たに深い皺を刻むだろう……



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