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■詩 No.008

「元旦の朝に」 1994.01.01


黎明の音響にさえ脅威を感じ
憔悴の眼(まなこ)には処世への不安が映りながらも
解決の曙光を見出そうと努める僅かの輝きがある

仕組まれた試合を野次も飛ばせず観戦している
権力の砦に行く手を遮られた旅人の差し出す貢物は
拝金思想のスフィンクスの前では徒労に帰す
事大主義の時勢に理不尽さを覚えても
溢れ出る流説がいつの日かそれを正当化させる

天の理法を犯す陋劣な歪曲者たちのみが
乱世の海で器用に舵を取り航海してゆく
我々はただ孤島に流れ着き途方に暮れるか
藻にからまって広大無辺の海に呑まれてゆくのみである

目眩めく時代の躍進の中で一人厭世を唱えても
事実や正義を葬り去る穴に落ち
偽造されたカルテを残して泡沫の運命を辿るのみ
蔓延した疫病が営々として働く庶民を蝕んでゆく
商売としての医学が進歩する
藪医者が途方もない法螺を吹いて
とりあえずの論文を発表する
王座を勝ち取った吝嗇家は
特効薬の開発よりも城壁の防備に勤しむ
王座を装飾する宝石の数々もまさしく有名無実のものばかり
集められた肩書きは庶民の血と汗の結晶体であった
天下を牛耳る魔物の群れは幕開きを待っている
今はただ腐敗した魔窟で息を潜めて……

溢れ返る誤謬と
塗り替えられた秩序によって打ち立てられた新たな指針
何人もの人々の命を奪ってもなお罪意識のない機長は
フライトレコーダーの処分に専念するのみ
しみだらけの老人が死出の旅支度もせずに
法の擁護のもとでぬくぬくと生活する
凶悪な少年たちは激増する

錬金術の研究は贋金造りが取って代わる時代
ある人たちは使途不明の金で懐を温めたり
犯罪の取り締まりよりも安全で確実な罰金の徴収に奔走する
そうしてやがては国有化してゆく
大規模な借家の群れを尻目に私欲を満たしてゆく

失われた美徳を求めて彷徨い歩く賢者は
時勢に暗殺されるだけだろう
ふるいにかけられた悪徳だけが原始的なものを形成し
再び歴史は繰り返す
過ちを繰り返し、より質(タチ)の悪い悪徳へと……

この難局を乗り越えるためには
たとえそれが悪の元凶だと分かっていても
その無用の長物に巻かれることである
そして肉を切らせて骨を断つように内部から玉砕するのである

燻り続ける忌わしい残り火が怪火を起こすのである
そしてそれは全ての美徳を燃やし尽くそうと
消えることなく一部の人間の心の奥底で
今もなお、燻り続けているのである――



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