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※想像上⇒/テーマ曲:「楽しみを希う心」(マイケル・ナイマン)/語り:森本レオ
織り成す運河のときおり水面(みなも)を照らす
月明かりや古びた街灯と
物憂げな表情を呈した水の精(ウンディーネ)たちが
夜の住処(すみか)でひっそりと謳いあげる哀しげな旋律の歌とが
この美しく小さな土地を訪れた旅人たちの
夢をふくらませ、疲れた心を癒してゆく
小舟(ゴンドラ)のたてるゆっくりと静かな水音と
船頭の歌うカンツォーネの調べに揺られながら
小舟は細い水路をどこにもぶつけることなくかきわけてゆく
この地を愛ししばしば移り住んだ
かつての偉人たちの別荘の合間やリアルト橋をくぐり
やがてサン・マルコ広場に出る――
初めてここを訪れる観光客たちに対しては
お決まりのコースなのだろう
昨夜賑わったこの広場や、隣のライオン小広場を見るや
私の心はひとりでに身体を離れ広場の中央へと向かう……
かつての恋人が、またカサノヴァや
サン・ミケーレ島から抜け出してきた
様々な仮面をつけた夜の住人たちが私の前まで来て軽く会釈をし
一緒に踊らないか?と声を掛けるが、私は迷わず恋人の手をとった
たちまち広場は昨夜の賑わいを取り戻して
夜の静寂がかえって雑踏のごとく私の鼓膜をやかましく打ちつける
――やがて絢爛な彩色を施した厳かな寺院が
最後の仕上に頭を抱えている中世の画家たちとともに現れる
私はかつての恋人と手を取り合い
永い空白を埋めるかのように熱っぽく、
幾度となく姿勢を変えながら狂おしく踊り続け
そして寺院の壁の中へ溶け込んでゆく
悩ましくも見事な壁画に見物客たちが大いに湧いている――
そんな情景が脳裏をかすめては幻覚のように
目で追うほどに素早く、視界から遠ざかってゆく……
漆黒の天鵞絨(ビロード)に
宝石を散りばめたかのような、はためく美しき天幕――
ああ、ヴェネツィアの夜空よ!
「汝、我が哀しみを知る者ぞ……」
更けてゆく夜の冷たさに今宵もまた、私は恍惚とした
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