|
「King Of A.O.R」こと、ボビー・コールドウェルのご紹介です。音楽雑誌、『ADRIB(内の人気コーナー、"AOR通信")』の愛読者の皆様、大変お待たせしました♪
本アルバムは、日本人が大好きな典型的なAORサウンドの代表格、ボビー・コールドウェルの79年に発表された記念すべきデビューアルバム(の再販版)です。88年には、パーラメントのCMに名曲「COME
TO ME」が起用されたり、とかく話題にのぼりやすいアーティスト&アルバムである。
この「イヴニング・スキャンダル」という邦題にふさわしい、いつかの日没風景に紳士然としたボビーのシルエットが映える、どこか懐かしいジャケットからも想像つくことかもしれないが、サウンドはマンハッタン生まれで、両親がブロードウェイのショービジネスに携わっていた関係で幼少時代からフランク・シナトラやカウント・ベイシーなどを聴いて育ったというボビーがマイアミでレコーディングした、センチでメロウなトロピカルサウンドに仕上がっている。これと同じような"トワイライト・ポップ"な作品で知られるアーティスト、ボズ・スキャッグスなどとともに、AOR界にその名を轟かせて以来、年代を問わず多くの日本人から愛されている類まれなアーティストである。
この甘いマイアミ・トロピカルなサウンドに、以前卒業旅行で訪れたマイアミの海や、また、音楽サークルの先輩たちとか、知人のイラン人と行った熱海の海の光景を重ねてみるのだった(爆)――。
僕はAORにハマっていた学生時代によく聴いたものだった。60分にしろ、120分にしろ、「マイベスト」と名付けた自己推薦のカセットテープを編集しようとする際、ボビーの傑作「SPECIAL
TO ME」と、ボズの「WE'RE ALL ALONE」が絶対的にノミネートされてしまうので、他の好きな曲の選曲は残された分数の中で調整しなければならなかったほどだ。
音楽界にAOR作品は数あれど、このアルバムほどジャケット、メロディー、歌詞、構成、ルックス、声、演奏(音色)etc、と何をとっても完璧なものは他に見当たらない……。デビュー曲の「WHAT
YOU WON'T DO FOR LOVE(風のシルエット)」で聞かせる、白人版スティーヴィー・ワンダーか?とも思わせる独特でソウルフルな声と歌い方――。
79年当時にも今と同じようなカフェバー・ブームがあったようだが、ボビーの曲はまさにそんなロマンティックなスペースで流れていて欲しい曲調揃いなのである。「LOVE
WON'T WAIT」や 「DOWN FOR THE THIRD TIME」などは特にそんな雰囲気の色濃く出た作品だ。
また、このデビューアルバムには含まれていないが、それから10余年の間にリリースされたアルバムには他にも名曲がまだまだ存在する。「COMING
DOWN FROM DOWN(センチメンタル・サンダウン)」なんかはマイアミテイストが織り込まれた作品に仕上がっているし、比較的新しめ(90年前後)の曲である「THE
SHAPE I'M IN」や「ONE LOVE」、「STAY WITH ME」、「HEART OF MINE」なんかも好きだし、歌詞はともかく、「SHERRY」の、胸に響くスティーヴ・ルカサーorジェイ・グレイドン風の乾いた音が特徴のギターソロやバッキングのメロディーやリズムは最高です。聴いていると酒が美味く感じそうな、メロウでジャジーな「STUCK
ON YOU」もいいし、「WITHOUT YOUR LOVE」や、爽快な「DON'T LEAD ME ON」などもいい。
暮れそうで暮れない、マイアミの長くて気だるい、そして切なくて甘い"スキャンダラスな夕方"に思いを馳せながら、この歴史的名盤に耳を傾けてみてください。いつもと違う「夕方」の中で、背伸びしてばかりいた若かりし頃の自分がいる架空の風景が眼前に広がってくることでしょう。最低限持っていたいアルバムとして推しておきます。
|