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■音楽レビュー No.050

「CAN'T UNDO THIS!!」/MAXIMIZOR & STARR GAZER


 ジュリアナ世代(僕はかろうじて違いますが)にとっては懐かしい「MAXIMIZOR」、「STARR GAZER」、「DINO STARR」ですが、またの名を「Y.HOSHINO」――。日本が誇るテクノ、ユーロ界の最後の砦、カリスマ寵児、4つの名前を持つ男、プロデューサー兼スタジオミュージシャン"星野靖彦"の、記念すべき1stアルバムである。

 「星野靖彦」という名前でなら昨今、見る機会も多い筈である。avex繋がりで言うと、EVERY LITTLE THING( http://www.avexnet.or.jp/elt/ )の五十嵐充や、Do As Infinity( http://www.d-a-i.com/ )の要である長尾大(D.A.I)などと共に、浜崎あゆみなどへの楽曲提供をしているコンポーザーとして、発表する曲はどれも現代の若者から多くの支持がある。

 浜崎あゆみの曲で言えば、「poker face」「YOU」「For My Dear...」「A Song for XX」「FRIEND」「Hana」「kanariya」「Present」「girlish」「Prologue」「End of the world」「And Then」「immature」「P.S2」「appears」「Who...」などの作編曲を手がけている。
 他にもavex trax創設メンバーだったという氏の業績は偉大で、安室奈美恵、華原朋美、MAX、D&D、観月ありさ、V6、COMING CENTURY、etc……と、今までに手がけたアーティストは数知れず。

 当時センセーショナルなブームを巻き起こしたジュリアナ東京に氏が興味を示す以前、氏は既にDINO STARR名義でのデビュー曲「BOOM BOOM BODY TALK」等で、ユーロビートの本山であるイタリアのレーベル、タイムレコードのジャコモ・マイオリーニ、A-BEAT-Cのデイヴ・ロジャース等、またテクノ界で言えばジョン・ロビンソン等、J-POP界でも小室哲哉と肩を並べる程の域にまで達していた。

 時代は折しも新しいテクノの波を迎合し、独特なファッションでディスコに向かう女性がマスコミでも多く取り上げられた。92年、MAXIMIZOR名義で「CAN'T UNDO THIS!!」、同時期にSTARR GAZER名義で「ARE U WAKE UP?」を発表。業界の人たちは、このような新しい音楽を「ハードコア・テクノ」と位置付けた。当時にしては高速なBPM、激しい縦ノリのリズムであるこれらの曲がダンスミュージックシーンを席巻していた。

 しかし、日本の哀しいまでの流行の変遷の速さで、気がつけばそれらは瞬く間に陳腐なファッションとなってしまった。「世界は私のためにある!」と言った、あの初代ジュリアナお立ち台クィーン"荒木師匠"こと荒木久美子( http://www.alles.or.jp/~pearl/shishou/frame.html )でさえ、お立ち台を追われ(卒業して?)会社( http://www.arakilabo.co.jp/ )を設立することを余儀なくされてしまった(爆)。最近では「ハイパーテクノ」と名称を変え、現代版「ハードコア・テクノ」を継承する格好となっている。
 
 僕の時代は、首都圏の大型ディスコと言えば、既にヴェルファーレが主流で、芝浦にあったジュリアナ東京はサーフィンショップ「ASR」へと生まれ変わろうとしていた頃だった(ジュリアナ閉鎖1年後くらい)。
 avex本社が現南青山に移ってきた関係でか、当時の僕の勤務先の上司から大量のインヴィテーションチケットを譲って頂き、3日3晩通っても消化し切れなかったものだが、友人を連れ立ってヴェルファーレに行ったものだった。
 インヴィで入場すればチケットを購入する必要はないので、入る前と出た後に缶ジュースを飲む以外、場内での飲食は全くなしという体育会系のノリであった(というより金がなかっただけとも……)。

 記憶が定かでないが、そこで先の「CAN'T UNDO THIS!!」なども多く耳にしたと思う。強いエフェクトのかかった女性の声の掛け声の後、「ARE U WAKE UP?」のイントロが流れ出した途端、場内のテンションは一気に最高潮に達した――。
 明るめの場内で、鮮やかに飛び交うスポットライトの光線が人々の汗に反射して眩しかった。体の芯まで震えるほどの重低音、トランス気味のリフ――、J−POPが流れ出した途端休憩に戻ってしまっていた人々をも駆り立て、ほぼ全員が総立ちの光景――、あれだけ広いダンスフロアであれだけ盛り上がれる曲を書いた日本人がかつていただろうか(当時の僕は海外の曲だと思っていた)?オーケストラヒットを下品なほど使いまくることなく、曲名にふさわしく、まさに目も覚めるような攻撃的なサウンドだった。

 本アルバム「CAN'T UNDO THIS!!」では、先の2曲以外にも、「SAVE IT」や「FEEL SO HOT」、「message」、「X-MEN DANCE」、「RE-FLUX」、「I LIKE IT (GIVE IT TO ME)」、「〔dzen-dze〕(字が出ない)」など(ほとんど全部じゃないかぁっ!)、キャッチーでノリノリな曲が多数収められているが、2曲目の「DON'T CLOSE YOUR MIND」では、往年のジョン・ロビンソンとの見事なコラボレーションを見せていて聴きがいがある。

 個人的には、部分的な感想は「宇宙」です(謎)!異次元です!繊細でそれでいて激しく、その点ではユーロビートと変わらない表現ですが、ユーロビートが効果音としてスポーツカーの爆音を求めるなら、こちらはシャトルのロケットエンジン音が効果音としてほしい壮大なイメージです(そういう意味では"TWO-MIX"( http://www.little-station.co.jp/ (2曲目の「LA VIE EN ROSE」の方)と似通う部分もある?もっと硬派だが)。
 そんな感じで、久し振りに懐かしい雰囲気を味わいたい方には是非オススメの一枚です。


【関連サイト】

・星野靖彦 日美のプリズム・テアトル<作詞家・井筒日美のHP>の「作詞家・作曲家・編曲家大辞典」より。
・星野靖彦 編曲家情報サイト 「palette」の解説。
・あゆの仲間! 「★LIME CHART★【ver,4.0】―ayu応援サイト―」という個人ページ。

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