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■音楽レビュー No.023

「THE SIX WIVES OF HENRY 8(ヘンリー八世の六人の妻)」/RICK WAKEMAN


 一風変わったタイトルのこのコンセプト・アルバムは、プログレバンドの代表格である元イエスのキーボーディスト、リック・ウェイクマンの記念すべきソロ・デビュー作です。(1971年の制作開始時期には、実際にはまだイエスに加盟していたようです。)1949年生まれの彼もまた、かのデヴィッド・ボウイやT・レックスのプロデューサーとして名高い当時の大御所プロデューサー、トニー・ヴィスコンティのもとで仕事をしたことのある人物です。

 僕が中学3年の頃、周囲でバンドを組み出す者がボチボチ現れ始めると、キーボードを担当していた友人の何人かがこぞって聴いていて、彼らを中心にそのイエスをはじめ、ELP(エマーソン・レイク&パーマー)、エイジア、キング・クリムゾン、リターン・トゥ・フォーエバー、マハビシュヌ・オーケストラ、そして後日には菅沼孝三率いるパラドックス、難波弘之などのプログレ(ッシヴ・ロック)ミュージックというものが流行り出した。

 教会にあるパイプオルガンなども使用し、クラシックの要素もきちんと取り入れた彼の音楽には独特の世界観があった。多くのアルバムを出した中で、私はこれと、3枚組アルバム(「太陽3部作」)くらいしか聴いていないので多くは語れないのですが、他の人の評と同様、彼の魔術的なサウンドの虜になった時期があったことだけは認めざるを得ない。ところでこのアルバムのテーマとなる「ヘンリー八世と六人の妻」ですが、僕はイギリス中世史はもちろん、歴史全般に疎いので詳しいことは分からないのですが(爆)、真っ先に思い出すのはシェイクスピアの戯曲「ヘンリー八世」です。

 中学3年のとき、他の多くの人と同様、海外文学に興味を持ち始めた時期だった私は、初めて読んだ作品が、新潮文庫の海外文学名作シリーズ、ドストエフスキーの「罪と罰」でした。このドストエフスキーと平行してハマっていた作家がシェイクスピアでした。一見全く違う内容の作品なのですが、今になっていろいろ聞くとこの異色の2人の組み合わせは、この2人が好きだったという人が意外と多いことにも気が付いたりした。高校時代には新宿伊勢丹美術館で開催された「西洋絵画の中のシェイクスピア展」にも足を運んでいます。これまでにも「中世(ヨーロッパ)」を舞台とした作品はあらゆるところに転がっており、ゲームの世界でも、とりわけRPGゲームなどは「中世」を舞台とするものが王道スタイルであった時期があった。他のSF・ファンタジー系の作品、例えば荒俣宏氏の翻訳モノなんかでもあったが、シェイクスピア作品の特徴は、駆け引きとラブコメ、教訓の要素も含んだ、あの血生臭い「中世」そのものであることが多かったように記憶しています。ヘンリー八世の頃までは王宮として使われていたらしい、後に監獄としても使われ、現在では観光客向けのレストランさえ入ったという900年の歴史を持つ世界遺産、「ロンドン塔」を舞台とした作品ももちろんある。

 またシェイクスピア作品を読むにあたり、当時友人たちと多く語ったテーマは「誰訳で読んだか?」というものだった。僕はたまたま目にしたシェイクスピア作品が新潮文庫のものだったので、格調高い文体が特徴の福田恆存訳がほとんどだった。他では白水社だったら簡易文が人気だった小田島雄志訳のものを読む者が多かった。僕は高校時代、ぶ厚い全集なんかは読む気もなかったから、新潮文庫のラインナップの中には「ヘンリー八世」がなく、仕方ないので古本屋で原文付きの坪内逍遥訳の全集が3,000円のところ1,000円くらいで売られていたのでそれを購入した。坪内逍遥と言えば、あの最古の文芸雑誌「早稲田文学」の創始者・編集者の一人であり、おそらく早稲田の英米文学専攻の人間は、彼の訳で読むことになるのだろうと想像しています。「六人の妻」にそれぞれあてがわれた、リック・ウェイクマンのつむぐ6曲の「物語」は、時代を超えて今、僕の耳に入ってきます。皆さんも是非、完全トリップ系のプログレ・ミュージックの代表作?である、この作品を聴いてみてください。


【関連サイト】

・リック・ウェイクマン 個人サイト。「CATHERINE OF ARAGON」のMIDIが聴けます。
・Others 個人サイト。曲が流れます。

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